二年前、自分が発した言葉を思い出す。
 
 このままでは、同じことを二度、繰り返すことになる。

(お遊びの時間は終わりだ、梨乃。そろそろ希乃来を返してもらう)

 踵を返して密度の小さい所まで抜けると、タクトはもう、いなかった。

 その代わり、と言われているような偶然が、俺を闇に葬られる。

「あ、俺一位だ」
「もう、驚きもしないのね」

 遠目で順位を確認する希乃来と、隣には梨乃の姿。
 俺との距離、向こうも自分も中心部から外れていて、目測的に数メートル。
 それに加え、俺の身長もある。気付かない、と言うには少しばかり、無理がある。

「満点。ふっ……」

 梨乃の溢した笑みから漏れだすこの桃色のオーラ。
 なんなんだ。

「どうした?」
 
 肩を抱かれ、完全に希乃来は梨乃の手中。
 だが、オレが気にくわないのは、女子の馴れ合いでも、希乃来から突発的に抱きしめる、それも、女に。
 そこまでは希乃来の真意を尊重する。
 一方の梨乃も、俺がレクチャーしているのだから、される行為がイレギュラーであり、レアであり、俺が嫉妬するのを分かっておきながら、受け入れるとは。

 そして、悶々とする思考がぴたりと、止んだ。
 
 今、静止画の中に俺と、もう一人の人物が動いている。

 それは、「男女の友情など存在しない」ことを、物語っていた……。