都合が悪いことにテストと被り、希乃来を待ち伏せしようにも、何やら女子と帰りはじめて全く捕まらない。
 ここ数日姿すら見ていない。
 今日だって、俺は一人で登校する始末なわけだ。

 校門近くになれば、朝から耳がつんざかれる思いで、根源に向かってみる。
 そこには、貼り出されている成績の結果で、落胆や嬉々とする声が充満し、何やら不気味な飽和状態となっていた。

「いやぁ、君のプリンスはいつでも完璧なのな!」

 遠くからで見えないと思っているところに、中心部から抜けて話しかけてくる友人「タクト」が俺の肩を掴んだ。

 大体、そんな報告がなくても、この黄色い声を聞いてれば、その不気味な飽和の原因が分かるってものだ。

「いや、そもそもプリンスって、アイツは女だ」

 そうだよ、綺麗で脆くて、お互いにとって唯一無二の存在なんだ。
 男なんかと勘違いされては困る。
 ひとつの抵抗として、視線をそらしてみた。

「いいよ、そんなのは聞きあきた」
 
 全く相手にされていないのを見れば、俺はかなり希乃来に固執していると見られている。言及されても反論は出来ないが。
 
「で、君のプリンスは今回、満点叩き出して、堂々のトップだったぜ」

(一位なのは当たり前だ。てか、プリンス呼びはやめねぇし、コイツだけは怖いもの知らずだ)

 それから、幾秒か沈黙が訪れる。
 それは、俺が腑に落ちないところがあったから。

「……?!」
「ちょ、おいっ」

 タクトが小さいから余計に力の差が生まれてしまった__と思いたい。
 前に立つタクトを押し退け、中心部にダイブするように人を掻き分けた。

 おい______嘘だろ……?