だけど、現実はチョコレートみたいに甘くはなくて。


 去年の2月14日、土曜日。


 私立に通っている彼は土曜も学校があることを知っていたし、土曜の6時発の電車は乗客が少ないことも知っていた。


 私は学校なんてその日はないけど、私だって気付いてもらえるように制服を着て、いつも通り6時発の電車に乗り込んだ。


 彼が乗ってくるまで緊張しまくりで、手は汗ですごかったし、バッグにしのばせたチョコの香りが余計に緊張感を煽るし……、とにかく緊張していた。


 あと5駅、4駅……なんて数えて、やっとたどり着いた彼の駅。


 ……だけど、窓から見えた光景に、汗が一気に冷えていくのを感じた。