2月14日


 ひとりで小さく笑って、窓の外を見た。


 私の膝の上には、毎年手作りのチョコレート。


 目的の駅までは、もうすぐそこ。





 電車を降りると、駅のごみ箱のすぐ近く、見知った後ろ姿が目に映る。


「待った?」


「ううん、待ってないよ」


 そんな会話を交わして、チョコレートの包みを差し出す。


 優しげに垂れ下がった瞳の彼は、少し赤いほっぺをして、嬉しそうにはにかんだ。


「なんか、去年の今日を思い出すね」


 それ、私も思ってた。


 だから、「そうだね」なんて、去年の今日を思い出して、ふたりで笑った。


                      【END】