ひとりで小さく笑って、窓の外を見た。 私の膝の上には、毎年手作りのチョコレート。 目的の駅までは、もうすぐそこ。 電車を降りると、駅のごみ箱のすぐ近く、見知った後ろ姿が目に映る。 「待った?」 「ううん、待ってないよ」 そんな会話を交わして、チョコレートの包みを差し出す。 優しげに垂れ下がった瞳の彼は、少し赤いほっぺをして、嬉しそうにはにかんだ。 「なんか、去年の今日を思い出すね」 それ、私も思ってた。 だから、「そうだね」なんて、去年の今日を思い出して、ふたりで笑った。 【END】