……今思い出しても笑えちゃう、1年前のバレンタイン。
失恋して、変な駅で降りて、見ず知らずの男の人にチョコを渡しちゃうなんて。
あれから1年経った今でも、その時のことを思い出しては笑ってる。
恥ずかしさで、たまに死にたくなるけれど。
名前も知らないあの先輩は、相変わらずあの時の彼女さんと仲良くしているみたい。
最近は毎日の朝の電車も、その彼女さんと一緒に乗り込んでくる。
前と同じ場所のドアに寄り掛かりながら、彼女さんを電車の揺れや乗客から庇うように立って。
眠そうな顔、あとから乗り込んでくる友達に見せる意地悪そうな顔、彼女さんへの優しさ、笑った顔。
1年も経てば、失恋の傷は癒える。
というか、私は本当にこの先輩に恋をしていたのかなって不思議に思うくらい、幸せな気持ちで先輩とその彼女さんを見ている。
だって、本当に幸せそうで、なんだかこっちも幸せを分けてもらっているみたいなんだもん。
そんな今日は日曜日2月14日、お昼の12時。
名無しの先輩さんの手には、彼女からだろうチョコの包みが握られている。
きっとこれから、どこかにデートでも行くんだろう。



