2月14日


 遠くで、電車の来る音がする。


 “カンカンカン……”って、踏切の音。




 消極的、もっと言うとコミュ障。


 そんな私は上手いことなんか言えず、それにさっきのショックが続いていて、自分でもびっくりな行動に出た。


「え……!?」


 持ってきていたチョコレート。


 捨てるのはちょっともったいないなって思ってた。


 別の人のために作ったものをこんなふうに押し付けるなんて、自分でもどうかしてるって後で思った。


 タイミングよく目の前に滑り込んできた、帰る方向への電車。


 私は見ず知らずの男の人の腕にチョコレートを押し付けて、素早く電車に乗り込んだ。


 振り返ってみた時の、男の人の顔、まだ覚えてる。


 いきなりでびっくりしたのかな、口をぽかーんと開け、呆然と電車の中の私を見ていた。