遠くで、電車の来る音がする。
“カンカンカン……”って、踏切の音。
消極的、もっと言うとコミュ障。
そんな私は上手いことなんか言えず、それにさっきのショックが続いていて、自分でもびっくりな行動に出た。
「え……!?」
持ってきていたチョコレート。
捨てるのはちょっともったいないなって思ってた。
別の人のために作ったものをこんなふうに押し付けるなんて、自分でもどうかしてるって後で思った。
タイミングよく目の前に滑り込んできた、帰る方向への電車。
私は見ず知らずの男の人の腕にチョコレートを押し付けて、素早く電車に乗り込んだ。
振り返ってみた時の、男の人の顔、まだ覚えてる。
いきなりでびっくりしたのかな、口をぽかーんと開け、呆然と電車の中の私を見ていた。



