「俺も好きな食べ物はチョコレートです。ハンバーグよりも好きです。一番好きなのは、鈴音さんが買い付けたこのプラリネかな」

 彼のその言葉を聞いて、突然胸の奥底から熱いものがせり上がってきた。鼻の奥が痛い、と思った瞬間、目から熱いものがこぼれ落ちる。

「鈴音さんっ?」

 椅子のガタンという音がして、涼介くんが立ち上がったのだとわかる。でも、目の前が滲んでいて、よく見えない。

 どうして涼介くんは私の心に響くことばかり言うんだろう。

「すみません、俺、また余計なことを……」

 気遣わしげに言われて、私はあわてて涙を拭った。最近、涙腺が緩すぎる。

「違うんです。母も同じことを言ってくれたんです……。『仕事をがんばったご褒美に、今までいろいろなチョコレートを食べてきたけど、一番好きなのは鈴音が買い付けたこのプラリネよ』って」
「鈴音さん……」

 彼の声が耳のすぐそばで聞こえた、と思った直後、ふわりと温かなものに包まれた。床に膝をついた彼が、私の背中に手を回し、抱き寄せてくれている。