恋の後味はとびきり甘く

 あ、そうか。教えてもらったんだから教えるのが筋だよね。

「小谷(こたに)鈴音です。脱サラしてチョコレートショップやってます」

 年齢も教えなきゃいけないかな?

 いや、別にまだ隠すような歳じゃないし、いいんだけど、でも、彼より五歳も年上だし、四捨五入したらアラサーだし、やっぱり、ねぇ。

 二十歳の頃の自分が二十五歳の女性をどう見ていたかを思い出し、年齢は言わないことにした。

 彼が両方の口角を上げ、私を癒やしてくれるやわらかな笑顔で見つめてくる。

「鈴音さんかぁ。かわいい名前ですね。あなたにぴったりだ」

 か、かわいい!? 私にぴったり!?

 彼の言葉にカーッと頬が熱くなった。

 彼がかわいいと言ってくれたのは名前のことだけど、でも、名前だろうとなんだろうと、男性にかわいいなんて言ってもらったことは、これまでなかった気がする。私にかわいいと言ってくれたのは、母くらいしか記憶にない。それも子どもの頃の話だ。