恋の後味はとびきり甘く

 ガラスのドアに手を掛けたまま、彼が振り向いた。

「あの、よかったら紅茶を淹れますので、一緒に飲みませんか?」

 彼に困惑顔で見返されて、ハッとした。先に断ったのは私なのに。

 言い訳するように付け加える。

「あ、いえ。ビジネスコンサルタント事務所を教えてくれた女性が、紅茶専門店を経営してて、その店でとてもおいしそうな紅茶を見つけたから、ひとりで飲むよりふたりで飲む方がおいしいかなって……」

 彼が瞬きをした。やっぱり困ってるよね。一度断ったのに、どういう風の吹き回しだって怪訝に思うよね。

 恥ずかしくなって左手で口を押さえたとき、彼が私に向き直った。そしてショーケースの前まで歩いてくる。

「よかった。俺もおいしそうなチョコレートを見つけたから、ひとりで食べるよりふたりで食べた方がおいしいかなって思ったんです」

 そう言って彼がさっき受け取ったばかりの紙袋を持ち上げて、笑顔になった。口角のキュッと上がった明るい笑顔にドキンとして、顔がほてってきた。