恋の後味はとびきり甘く

 指定された箱を取り上げ、バーコードリーダーでバーコードを読み取った。レジに表示された金額を伝えると、彼がポケットから財布を取り出した。代金を受け取って、お釣りと紙袋に入れたチョコレートの箱を差し出す。

「ありがとうございました」

 彼がこくり、とうなずいてゆっくりと背を向けた。

 その背中が店を出ていこうとしたとたん、心がすぅっとが冷えたような気がした。その感覚に戸惑ってしまう。だって、お客様とお話しすることはこれまでだって何度もあったのに、帰ってしまうのをこんなふうに寂しく感じるなんて……。

 名前も知らない彼。また来てくれるかどうかわからない彼。

 逆境から夢に向かって歩んでいる彼。

 彼は私から前向きになる力をもらった、と言ったけど、私だってそうだ。もっと……彼と話してみたい。彼の夢と夢に向かうエネルギーに触れてみたい。

「あの」

 気づけば声を掛けていた。

「はい?」