恋の後味はとびきり甘く

 私が困惑して黙っているのを見て、彼があわてたように言う。

「すみません、変な意味じゃなくて、もっとあなたの話を聞いてみたいな、と思って……」

 彼が頬を赤くした。私の方も頬が熱くなる。彼はショコラティエを目指しているのだ。単純に起業の話が聞きたかっただけなんだろう。それなのに、私ってばノルマとか変な想像をして……。彼くらい社交的な人なら、こういうふうに興味を持った人と話をして盛り上がることは普通なんだろう。

 でも……私にとっては普通じゃない。年下とはいえ男性からこんなふうに誘われるなんて、生まれて初めての出来事だ。大学時代だって、男子が私に声をかけてきたのは、私の友達が目当てだったからだ。それに……彼みたいなイケメンとふたりきりで向き合ったら、緊張してしまって、盛り上がるような会話なんてとてもできそうにない。

「せっかく誘っていただいたんですけど、閉店作業があるので……」
「あ、そうですよね。すみません。お忙しい時間に」

 彼が言って、ショーケースの上の緑色のリボンのかかった箱を指差した。

「これをください」
「ありがとうございます」