恋の後味はとびきり甘く

「ごめんなさい。私には隙間時間なんてないんです」
「なぜ? まさか、さっきのあいつ? あいつが小谷さんの心を占めてるから?」
「そう……みたいです」
「まいったな」

 古川さんが後頭部をくしゃくしゃと掻き、ため息をついた。

「失礼します」

 私はそれだけ言って店を飛び出した。商店街のまばらな人通りの間に、早足で歩く彼のうしろ姿を見つけて懸命に走った。

「涼介くんっ!」

 涼介くんの肩が小さく震えた。でも、足を止めることなくそのまま歩いて行く。

「待って! お願い!」

 たとえ本当に挨拶のためだけに来てくれたのだとしても、もう一度彼と話したい。彼の中では思い出になっているのだとしても、七年間を語りたい。だって、そう思ったから涼介くんもモン・トレゾーに来てくれたんでしょう!?

 必死で眼鏡店の角から飛び出したとき、走ってきた自転車とぶつかりそうになった。鋭いブレーキ音が響いて、とっさに目をつぶる。

「きゃっ」
「危ないな! どこ見て歩いてんだよっ!」