私は店を軌道に乗せた。涼介くんは夢を実現した。お互い胸を張れる。それでいいじゃない?

「よし! うちはうちのチョコレートをがんばって売らなくちゃ」

 つぶやきながら売り場に出て、笑顔で美佳ちゃんに話しかける。

「留守の間、問題ありませんでした?」

 私の問いかけに、美佳ちゃんが頬を染めた。

「問題はなかったです。それで、あの、実は……鈴音さんのお留守の間に、彼が来てくれたんです」
「彼?」

 美佳ちゃんの頬がさらに赤くなる。

「例の……片想いしてる彼です。『明日でバイト終わりなんだろ。明日の夜、お疲れ様会やろうか』って言ってくれました」

 美佳ちゃんのはにかんだ笑顔を見て、うれしくなった。

 わざわざ美佳ちゃんの様子を見に来るなんて。ここに幸せの予感がひとつ。

「よかったですね!」
「で、でも、一緒にご飯食べに行くだけなんですよ?」

 そう言いつつも美佳ちゃんの表情は緩みっぱなしで、私は彼女の喜びを一緒になって噛みしめた。