「鈴音さんは恋人にあげるなら、どんなチョコを選びますか?」

 美佳ちゃんの声に、私は涼介くんとの思い出の世界から現実の世界に引き戻された。七年前の記憶を頭の中から振り落とそうと、軽く頭を振る。手もとには、広げたままの包装紙とその上に置いたままのチョコレートの箱。包装作業をしようと思っていたのに、まったくはかどっていなかった。

 この七年間、思い出さないようにしていたのに、今、こんなにも愛しさも切なさも鮮やかに思い出したことに驚いてしまった。

 気持ちを切り替えるように視線を上げて天井を見て、人差し指を顎に当てて考えながら言う。

「そうですねぇ……」

 涼介くんと別れて以来、無我夢中で仕事をして新しい恋をする暇なんてなかったから、そういう質問には困ってしまうな。

「相手がどんなチョコを好きかなって考えますね。私の好みじゃなくて」
「やっぱりそうですよねぇ」

 美佳ちゃんが何度もうなずいてショーケースの中を見ている。

「美佳ちゃん、誰かあげたい人がいるんですか?」

 訊いたとたん、彼女の頬に朱が差した。