恋の後味はとびきり甘く

「すごくおいしいです」

 私の感想を聞いて、涼介くんがホッとしたように微笑んだ。

「よかった。簡単だけど見栄えのする料理を、バイト先の店長に教えてもらったんです」

 涼介くんが言って料理を口に運んだ。

「これって簡単なんですか?」
「材料を煮込むだけですよ」
「そうなんだぁ。じゃあ私でも作れますよね」

 レシピを教えてもらいながら、パンと一緒にトマト煮込みをおいしくいただく。最後のひと口までスープを飲み干したとき、涼介くんが立ち上がった。

「チョコレートムースを出しますね」

 冷蔵庫からマグカップをふたつ取って戻ってきた。

「本当はもっとおしゃれな器にしたかったんですけど」

 涼くんが申し訳なさそうに言って、私の前にマグカップを置いた。白いカップの中にはチョコレート色のふんわりとしたムースがあり、イチゴと生クリームで飾られている。

「ううん、すごくうれしいです」

 好きな人が、涼介くんが祝ってくれるから……。

 ムースにスプーンを差し入れたら、ふわっと軽い感触だ。口に入れると見た目通りのやわらかさで、ほろ苦さの中にやさしい甘さがある。

「すごいなぁ。口の中ですーっと溶けていきます」

 消えてしまうのが名残惜しいくらいの繊細な味だ。頬を押さえてゆっくり味わっているのを、涼介くんがかすかに微笑みながら見つめている。