恋の後味はとびきり甘く

「今日は鈴音さんに俺のうちに来てほしいなって思って」

 振り返って見たら、彼が小さく微笑んで続ける。

「俺が料理を作ります」
「ホント? うれしいです」
「だって、今日は鈴音さんの誕生日でしょう?」

 言われて気づいた。この一週間はそんなことを思い出すほどの余裕が心になかったから、すっかり忘れていた。

「料理はあまり得意じゃないんですが、デザートにチョコレートムースを作ったんです」
「あ、ありがとう。それじゃ、中で待っててください。すぐに閉店作業を終えますから」

 涼介くんを促して店の中に戻り、いつも以上に手早く片付けを終えた。そうして彼とともに外に出る。

 涼介くんが手を伸ばして、私の手をそっと包み込んだ。手袋をしていないその手は、ひんやりとしている。

「やっぱり手が冷えてるじゃないですか」

 温もりを分けるように、彼の大きな手をギュッと握った。

「鈴音さんはあったかいですね」
「店の中にいましたから」
「鈴音さんの手が冷えちゃいますね」