実のところ、彼女らの推察は…正しい。

真っ黒のA4サイズのバッグ。

奥の奥に隠してあるのは、
世にも重たいナンと手作りチョコレート。

何度もやり直しの挙げ句、夜更けにやっと完成したの。
目の下にクマまでつくってさ。

そのお相手は今、私の真正面にいる彼。

4月に支社から転勤してきた、同期入社の河野正義クン。
目の前で大義そうに伸びをした彼は、同期なのに職位は私の2コも上。

噂では社でも有名な遊び人、泣かした女は数知れず。

これ見よがしに、さっき二人がこっそり渡してたチョコを、無造作に机に置いている。

つまり2人の言うトコロの主だった男(ヒト)で、『ランク』でいけば、間違いなく上位。

対する私は、地味で目立たぬ、 
真面目だけが取り柄でここに置いて貰っている32歳、間違いなく『ランク』外。

………無謀だって、分かってる。


だけどこないだ偶然聞いて、九州支社での彼女と別れて今はフリーなんだって知ってしまった。

だからこれは
私の…最後のチャンス。