「ティア!速く!!」

「でも!まだあの人が!!」

ティアは、嵐で歪む洞窟を雨のせいか、それとも涙なのか、冷たくにじんだ目で心配そうに見つめる。

「フハハハハハハ!!」

恐ろしく、醜い声が辺りを揺るがす。

「この世の運命を握るお前が、1人の男だけのために選択をしていいのか?」

恐ろしい声は、迷っているティアの決断を揺らがす。

「ーっやく!」

ロゼリアが何かを叫んでいるが、嵐にかき消されて声が聞こえない……。

「ミカエルー!ミカエルー?!」

最後の望みを託し、大声で叫ぶ。(お願いだから……出てきて!!)

「フハハハハハハ!!それは、無理だな。」

まるで心を見たかのように語りかける。

「あの人に何をしたの?!」

「アイツには、私が生きている限り一生私に力を送り続ける人形になる呪いをか
けたのだ!フハハハハハハ!」

ティアは、まるで足が折れてしまったかのように、ガクリとその場に崩れる。

「ティア!!しっかりしなさい!!」

崖の向こうからロベリアが叫び続ける。

『ベルトルソー・セッタ・レユード!!』

ロゼリアの呪文を唱える声と同時に、太いツタがティアの体を巻き付け、ロゼッタのところへ下ろす。

「ほら!アイツを倒しちゃえば、ミカエルは戻って来るのよ?!」

ティアは、ハッとしたように立ち上がると、呪文を唱える。

『聖なる風よ!我の思いに従い、突風を巻き起こせ!!』

ぶわぁっ!と風の渦が巻き起こり、あっという間に怪物を飲み込んでいく。

「う、うぎゃぁー!!!!!!」

怪物は、そう叫ぶと水のようにパァンとはじけて空に登っていった。

「これで!……」

ガガガガガガガガッ!!
怪物が消えたと同時に、洞窟の岩が崩れ、跡形もなくなってしまった。

「うそ……でしょ?」

彼女の目には闇のような絶望が映っていた。ガクリと崩れ、そのまま意識がなくなった...。