私が一人悶々と考え事をしていたのを悟ったのか、大次さんが、おいっ、と話しかけてきた。


名前で呼べよ!怒。

何て言えるはずもなく、なんですかー?っと返事をした。


「言ってなかったけど、俺今日の主役ね。」

「別に聞いてないし、、、。て、え?!やっぱり?!てことは、!!」


私が、若手社長?!と聞く前に、大次さんがイスから立ち上がり、何故かネクタイを直し、私に近づいた。

そして、明らかに私をバカにするようなトーンで。

「俺、出世できないらしいけど、社長やらせてもらってます。」


そう、私の耳元にささやいた。




「……真に申し訳ございませんでした。。。」

もう、いろいろ切羽で、それしか言えなかった。


「よろしい。」

そういって、さりげなく、優しく私の耳を噛んだ。

「なっ!!!!」

「ご褒美。」

大次が、満足そうな顔でこちらをみる。



何でか分かんないけど

馬鹿にされて悔しいせいなのか

いきなり耳元で囁かれたせいなのか

耳をかまれたせいなのか

分かんないけど



たぶん私

いまスッゴク顔が赤いと思う。


これだけは分かる。





この後行われたセミナーで、ステージに立つ大次さんを
直視できなかったのは何でだろうか。




心の歯車が少しずつ動き出した。