流れていく風景を、何も考えないように眺めていても、

あたしの中の疑問や不安はどんどん募っていき、あたしはますます無口になった。


もともと、あまり会話がはずむほうではない。

森川さんも、これといって口を開かぬまま、ドライブの目的地に着いてしまった。



ほんの少し、雪の積もった山の展望台。

今年はじめて見る雪に、はしゃぐことができないのは――やっぱり、この前のことが心にひっかかっているから。


「――あの……」


高台のベンチに座って、あたしは重い口を開いた。


「森川さんにとって……あたし、って、なんなんですか……?」


あまり近くはないふたりの間を冷たい風が通り抜けて、あたしは身震いした。

今きっと、ふたりの心の距離も、これくらいに違いない。


「――大事な、存在だよ」


森川さんは静かに、つぶやいた。

なにかを噛みしめるような、深く胸に染みる声は――それでもやっぱり、あたしのことを“彼女”だとは言ってくれなかった。