「――薫」
いつしか、そう呼ばれるようになった。
お互いに慣れないその呼び名――ふたりで顔を見合わせて、くすりと笑った。
「呼び慣れないな」
「うん……」
放課後には、モ会の部室ではなくワンルームのマンションに通うようになった。
特に何を話すわけでもなく――ふたりコタツに座って、テレビを見たり、ときにはゲームをしたり。
「――今度の休み、どこか行きたいとこ、ある?」
「あ……土日……」
デートなんて、生まれてこのかたしたことがない。
返答に困っていたら、彼は優しく微笑んだ。
「ドライブとか、行きたくない?それともこんなふうに、家でだらだらしてる?」
「行きたいです……!ドライブ」
「もう紅葉は終わっただろうけど……ちょっと遠くまで、足をのばそうか」
あたしは無言でうなずいた。
「……家まで送る。もう遅いから。車取ってくるから、待ってて」
森川さんは、コートを羽織り、部屋を出ていった。
いつしか、そう呼ばれるようになった。
お互いに慣れないその呼び名――ふたりで顔を見合わせて、くすりと笑った。
「呼び慣れないな」
「うん……」
放課後には、モ会の部室ではなくワンルームのマンションに通うようになった。
特に何を話すわけでもなく――ふたりコタツに座って、テレビを見たり、ときにはゲームをしたり。
「――今度の休み、どこか行きたいとこ、ある?」
「あ……土日……」
デートなんて、生まれてこのかたしたことがない。
返答に困っていたら、彼は優しく微笑んだ。
「ドライブとか、行きたくない?それともこんなふうに、家でだらだらしてる?」
「行きたいです……!ドライブ」
「もう紅葉は終わっただろうけど……ちょっと遠くまで、足をのばそうか」
あたしは無言でうなずいた。
「……家まで送る。もう遅いから。車取ってくるから、待ってて」
森川さんは、コートを羽織り、部屋を出ていった。