その夜、マナーモードにしたままだったあたしのケータイが、ベッドサイドで震えた。

ベッドにうつ伏せで突っ伏して、頭から布団をかぶっていたあたしが、その小さなバイブ音に気づくのには、ずいぶんと時間がかかってしまった。


一向に鳴りやまないバイブレーションに、あたしは仕方なく、布団から手だけを伸ばした。

電気もつけていない真っ暗な部屋で――ディスプレイの光が、目に突き刺さるように眩しい。


さっき、仕事帰りのお父さんが、ただいま、とあたしの部屋を覗いたようだったけれど、

もう面倒だったので、寝てしまったことにした。





電話の相手は森川さんだった。


「――もしもし……お疲れさまです……」


ひとまず、そんな業務的なあいさつをしてみたものの、彼があたしに電話をしてきた理由は最初からわかっていた。


「……大丈夫?」


今日はどうだった?、とか、
サユリさんとは何を話したの?、とか――

そんなことよりもまず、あたしを心配してくれた森川さんの言葉に……一日中我慢していたなみだが、とうとうこぼれてしまった。