「カイくんと別れたのは、わたしの浮気が原因なんです。今年、就職でT県に引越して、はじめて遠距離になったんです。

はじめはお互い連絡し合って、寂しさも紛れてたんだけど……彼がテスト期間になって、電話もメールも出来なくなっちゃって……」


あたしは相づちすら打てずに、うつむいたまま、ただ、サユリさんの話に聞き入っていた。


「つい、近くにいる人に甘えてしまったんです。半年近く会えなくて、なかなか連絡もつかなくて、寂しくて……」


サユリさんにフラレたばかりのころの、あのカイ先輩の悲痛な姿が頭に蘇った。

それと同じくらい、目の前に座るサユリさんの姿は痛々しかった。


「浮気しても、寂しさが紛れることはなくて、今まで以上に自分自身が嫌になって、自分がわからなくなって――その寂しさを、彼にやつあたりしてしまって」


サユリさんは、小さく声を震わせた。

あたしはじっと、目の前に置かれたミルクティのカップから立ち上る湯気だけを、見つめていた。