ファミレスの中の生ぬるい空気が、手をつけないままのオレンジジュースにたくさんの汗をかかせていた。

カラン、と氷が鳴いて――森川さんは静かにつぶやいた。


「相談にはのるよ。リュウは頭ごなしに否定するだろうし、あいつじゃ相談相手にはならないでしょ?」


冷たい口調が一転して、思いがけない優しい言葉に、あたしは驚いて顔をあげた。


「ただ、もうこんなふうには会わないほうがいい。誤解でもされたら……おれもたまったもんじゃない」


と、森川さんは小さく両手をあげて苦笑した。


「やっぱり、あのことはリュウに言うべきじゃなかったな。中林さんを、泣かせたいわけじゃなかったのに」


森川さんと別れて、まだ2ヶ月も経っていない。

好きだと言ってくれた彼をたくさん傷つけて、別れた後もきっとまた傷つけてる。


あたしが得たカイ先輩との幸せは――思った以上にもろくて、たくさんの犠牲を払っていた。



そんなものを、あたしはどうして後生大事にしているのだろう――