いちりょうぐそくっ!

ある日の昼間。父の国親が前線から岡豊城へ帰ってきた日の事。





僅かな家臣と共に国親は帰ってくるなり姫を呼ぶ。

「元親!元親はおるかぁ・・・!」


しかし姫が出てくる気配がない。


慌てて家臣の福留親政がやって来て国親に挨拶をする。

「国親様お久しぶりです。姫に何かご用でも?」


「実はな、元親も今年で14歳。跡取りとしてはそろそろ初陣をさせねばならぬと思うてな。親政、お主の目から見て元親は初陣しても大丈夫と思うか?」


福留親政は言いにくい顔をする。


「何じゃ・・・?」

国親は親政の顔を見ると不安になる。


「言いにくいのですが・・・姫は武芸も学問も優秀ですが心が弱いと言いますか・・・」


福留親政は姫を普段から見ている。


村人から馬鹿にされ、やり返す事もせず、普段からボヘーと領内の観察。


夜にはお絵描きに没頭と、とても戦場に出して良いとは思えない。


「精神面が・・・?もう良い。ワシがこの目で確かめて見る。」


国親はそう言い、姫の部屋に直行する。


姫の部屋は岡豊城で一番見晴らしの良い部屋である。

城の最上階で、国親は必死に階段を登り部屋に辿り着く。



「元親、開けるぞ!」

国親は年頃の姫の事を考え、襖を開ける前に声をかける。




襖を開けると部屋は変な落書きの紙まみれであった。


絵は上手いかも知れないが年頃の子供が部屋に籠ってお絵描きしているのを見て情けなくなる。


「元親・・・。お前は何をしとんじゃ?」



「お絵描き。私が理想とする町並みを書いているの。」



この落書きの紙の量をみると1日だけではない。

恐らく毎日部屋に籠って落書きを書いている。


国親は怒りの顔に変え、姫の落書きの紙を破り捨てる。


「こんな下らない事をするぐらいなら武芸に励めぃ!」

大声で怒鳴り、それにビクつく姫。


少し強く言い過ぎたかな・・・と国親は思ったが、これも長宗我部家の為・・・愛する我が子の為でもある。


これを機に心を入れ換えてくれたら父としては嬉しいものだ。


「もう良い。今回の初陣は止めておくか。」


そう優しく言って、国親は城を発つ。



だが、ビリビリに破かれた紙を見て姫は悲しむ。


今まで自分が求めてきた町並み・・・都が、いうなら姫だけが見てきた世界がその紙には書かれていた。


だが、それを無情にも破かれた為、姫は父に否定された気持ちになった。