「何度もいうけど、私はお前と付き合う気はないからな」

「俺も君と付き合えるとは思ってない。でも好きでいるのは自由だろ?」

「その軽々しい態度は改善してくれよ。」

校門を出たところで
境本が自転車の後ろに乗った。
境本は見た目通り質量を
持たないみたいに軽いから、
実際二人乗りでも大してつらくない。

慣れた態度でブレザーの裾を掴む。
後ろから抱き締めるように
つかまってくれないのが残念だ。

暫く駅までの道を進んでから
通学路を外れる。

「おい、どこに行きやがる」

「やだな、放課後デートだろ?」

赤信号に引っ掛からないと
いいなと思いながら右に曲がった。
そこで後ろも行き先に
思い当たるところがあったらしい。
自転車で20分くらいはかかってしまうが
もう行くのは何度目かだった。

駅から少し離れた場所に、
廃ビルがいくつか並んだ場所がある。

そのうちの一つ。
一番高いビルが境本のお気に入りだ。