フィンセはナンバー1


 誰もいない校舎で、あたしの足音だけが響いていた。


 その時、音楽室から、ピアノの音が流れてきた。


 凄く優しい曲だ。誰が弾いているんだろう?

 引き寄せられるように、あたしは、音楽室へ歩いて行った。
 音楽室のドアから、そっと覗いて見ると、りく君が弾いているじゃないですか。

 りく君が弾き終わるまで、耳を傾けていた。

 りく君、ピアノも弾けるんだー。

 考えてみれば、りく君は大手会社の御曹司だし、小さい頃から、教養の為に作法や英会話。それに、習い事をやっているのは当たり前なのかも知れない。

 うっとりと聴いていると、りく君があたしに気づいて、ピタッと弾く手が止まった。


「ご、ごめん。邪魔しちゃったみたいでー」

 あたしは、慌てて帰ろうとした。

「入れよ」

 りく君は、あたしを招き入れた。


 中に入ったものの、あたしとりく君は、沈黙のままでいた。

 あたしは、何か喋ろうと口を開いた。

「り、りく君が、ピアノ弾けるなんて知らなかったー」

「ガキの頃から、習わせられていたからな」

「やっぱり、そうなんだー」

 その後は、また沈黙になってしまった。

 話が続かない……。