フィンセはナンバー1

 カメラマンが、りく君に言っているのが聞こえてきた。

「どうしたのかしら?りくー。こんなこと始めてよねー」

 女性のスタッフ達も、ひそひそと話している。

「すみません。もう一度、お願いします!」

 りく君は、大勢の人が見てる前で、頭を下げた。

「わかったー。じゃ、もう一度撮りなおすぞ」

 カメラマンが、厳しい表情でりく君に言うと、もう一度、撮影を始めた。


「はーい。OK!」

 何枚か撮りなおしをすると、カメラマンの表情は、さっきと違って、和らいでいた。

「お疲れ様!次も頼むよ」

「はい!」

 カメラマンに言われて、りく君は深々とお辞儀をした。



「お疲れ様でした!今日の撮影は終了でーす」

 独りのスタッフの呼びかけに、他のスタッフも片付けを始めた。


 周りで見学していた人達も、ぞろぞろと散らばり始めた。


「俺達も帰ろうか」

 直也君が、あたしを促した。

 正門まで歩いて行ったものの、何だか、このまま帰りたくなくて、あたしは足を止める。

「あ、あたしー。ちょっと、トイレに行ってくる」

「じゃ、ここで待ってるよ」


 あたしは、その場から離れると、校舎の中へ入った。