「いいよ。気にするなってー」
直也君は、そう言っているけど、何だか、無理してそうだ。
撮影は、ベンチに座っているところから始まった。
結構、ギャラリーがいて見えない状態だった。
あたしと直也君は、人と人の隙間から、覗き込んだ。
ベンチには、カメラ目線のりく君が、キリッとした顔で座っていた。
あたしは、あのベンチで、りく君にセリフの練習を付き合わされたことを、思い出す。
「りく!今度は、本に目を向けてみようか」
カメラマンが、りく君に指示をした。
りく君は、言われた通り、持っていた本を開くと、目線を滑らせた。
「あいつ、やっぱりー、かっこいいな……」
隣で、ずっと無言のまま見学していた直也君が、口を開いた。
確かに、本を読んでいる姿は、様になってるし、他のギャラリーもうっとりと見つめていた。
それから、何シーンか撮影すると、休憩に入った。
「次のシーンは、急きょ、穂乃花ちゃんが入りまーす!」
独りのスタッフが、他のスタッフに声をかけた。
また、穂乃花ちゃんも一緒なんだ……。
穂乃花ちゃんは、りく君と何か話しながら、時折、笑顔を見せた。
