フィンセはナンバー1


 南君の質問に、りく君は口を開いた。

「……俺が、こいつを?君と付き合っているのに、人の彼女を好きになるわけないだろうー」

「なら、いいんですけどー。穂乃花ちゃんがいるのに、そんなはずがないとわかっています。でも、あの時……」

 南君が、何か言いかけた時、

「悪いけど、これから撮影があって忙しいんだ。じゃあな」

 りく君は、サッと立ち上がった。

「すみません。邪魔して」

 南君は、さっさと、フェンスの端に歩き出した。

「随分、彼女想いの彼氏だな」

 りく君が、淋しそうな声で、あたしの耳元で囁いた。

「ち、違う……」


 明日までの彼氏と言おうと、りく君の方を振り向いた。

「……」

 りく君は、少し淋しげに、ぱっと背中を向けると、振り向きもせず行ってしまった。


 チクン……。

 どうして、淋しそうな顔をするのー?


 できれば、このまま追いかけて、確かめたい。それに、南君のこと誤解も解きたい。

 でも、りく君には穂乃花ちゃんがいるー。


「坂口さんー!」

 キュッと唇を噛み締めた時、南君の呼ぶ声が聞こえてきた。

 あたしは、はっとして慌てて、南君の方へ向かった。