南君の質問に、りく君は口を開いた。
「……俺が、こいつを?君と付き合っているのに、人の彼女を好きになるわけないだろうー」
「なら、いいんですけどー。穂乃花ちゃんがいるのに、そんなはずがないとわかっています。でも、あの時……」
南君が、何か言いかけた時、
「悪いけど、これから撮影があって忙しいんだ。じゃあな」
りく君は、サッと立ち上がった。
「すみません。邪魔して」
南君は、さっさと、フェンスの端に歩き出した。
「随分、彼女想いの彼氏だな」
りく君が、淋しそうな声で、あたしの耳元で囁いた。
「ち、違う……」
明日までの彼氏と言おうと、りく君の方を振り向いた。
「……」
りく君は、少し淋しげに、ぱっと背中を向けると、振り向きもせず行ってしまった。
チクン……。
どうして、淋しそうな顔をするのー?
できれば、このまま追いかけて、確かめたい。それに、南君のこと誤解も解きたい。
でも、りく君には穂乃花ちゃんがいるー。
「坂口さんー!」
キュッと唇を噛み締めた時、南君の呼ぶ声が聞こえてきた。
あたしは、はっとして慌てて、南君の方へ向かった。
