フィンセはナンバー1


 残りの階段を一気に上がって行こうとした時、上から急いで降りてきた男子と肩がぶつかって、あたしは、バランスを崩して足を踏み外してしまった。

「坂口さんー!!」

 遠くで、慌てた南君の声が聞こえてきた。


 あたしは、恐怖のあまり、気を失ってしまった。


 気を失っている間。

誰かに、ふわっと抱きかかえられた感覚が、あたしの身体には残っていた。




 何時間経っただろうー。

あたしが、目を覚ましたのは、保健室のベッドの上だった。

「坂口さん!気がついた?」

 目の前には、南君が心配そうに椅子に座っていた。

「あたし……」

 あたしは、ゆっくりと起き上がった。

「階段から落ちたんだよ。でも、よかったー。気がついて……。どこか痛い所はない?」

「うんー。大丈夫……。もしかして、南君が、助けてくれたの?」

「う、うんー」

 南君は、ぎこちなく頷いて見せた。

「南君。ありがとう……」


 りく君が、いる前で階段から落ちるなんて、何てみじめなんだろうー。


「……坂口さん。階段を落ちたのって、りくのこと見てたからか?」

「えっ!違う……。あの時、人にぶつかってー」