フィンセはナンバー1


「まだ、全部じゃないから、君達に案内してもらおうかなぁー」

 あたしと話す時より、優しい声で言っているのが聞こえてきた。


 な、何よ!あたしの時より、キャラ変わってない!?


「あー、ムカつく!」

 教室へ戻ってからも、何だかイライラが募る。

「どうしたの?坂口さん。何か、あった?」

 隣の席の南君が、驚いた顔であたしを見た。

「な、何でもないの」

 あたしは、恥ずかしくなって俯いた。

「それなら、いいんだけどー」

 南君は、何て優しいのー!!りくとは、大違い。




 ザーーー。

 昼間は、あんなに天気が良かったのに、帰りになると、雨が音をたてて降り出していた。

「どうしよう。傘、持ってきてないー」

 昇降口で、立ち往生していると、南君が出てきた。

「坂口さん。良かったら、入ってく?」

 南君は、傘を広げながら、あたしに声をかけた。

「えっ、でもー」

 あたしが戸惑っていると、南君は、あたしの肩を抱いて傘を差しながら、歩き出した。

「ひゅー!直也ー。坂口と付き合ってるのかぁー?お前ら、ラブラブだなぁー!」

 近くにいたクラスの男子が、おもしろ半分でからかった。