フィンセはナンバー1


 溜め息をついて歩き出した時だった。

 急に、後ろから腕を掴まれ、資料室の中へ連れ込まれた。

「な、何するのよ!?」

 あたしは、慌てて手を払いのけると、相手の顔を見た。

「り、りく!」

 あたしは、声を荒立てた。

「バ、バカ!声を出すなよ」

 りく君に、手で口を塞がれて、あたしは苦しくて、じたばたした。

「あ、悪いー」

 りく君は、パッとあたしの口から手を離した。

「何やってるのよ。みんな捜してるわよ」

 みんなから逃れるために、隠れているのはわかってるけど、わざと聞いてしまう。

「わかってる。それより、俺がフィアンセだって言っていないだろうな?」

「い、言うってないわよ」

 あたしは、ムスッとしながら応えた。


 まんがいちバレたりしたら、学校中だけじゃない、あちこち大騒ぎになってしまう。


「口が裂けても、言うなよ。この前も言ったけど、俺は認めてないんだからな」

 りく君は、念を押すと、ドアを開けて廊下へ出ていった。

「りくー!何処に行ってたの?」

 廊下から、女子達の声が聞こえてきた。

「ごめん。学校の中、探検してた」

「何だー。言ってくれれば案内したのに」