「じゃあ、キスしよっか?」

そう言って佐野くんが私の肩に手をかける。

「ちょ、ちょっと!」

「何? キスしたくないの?」

「したくないとか、そういう問題じゃなくて。」

「じゃあ何? まさか初めてなの? まさかファーストキスとか気にしてる?」

「そんなことない。キスくらい60代のおじいちゃんとでも出来る。そうじゃなくて、なんで霊安室でなの?」

佐野くんは私の肩に手をかけたまま、「そうだねー」と言った。

「何かさー、死に関係ある場所で愛に関係あることするって興奮しない?」

佐野くんは歪んでいる。