高木さんはカチンと窓の鍵を開けた。風がふわっと吹き、髪をなびかせる。
「ほら、暖かいだろ?」
「これが、暖かい、って、ことなの?」
寒くない。ふわふわと心地のよい風はとても眠くなって。
「ほら。気持ちいいだろ。外に出たらもっとすごいんだ。そうだ、散歩でもしてみるか?人がいない公園とかなら大丈夫だろ」
「さ、んぽ?こう、えん?」
「そう、きっと藍も気に入るよ。」
外は怖いけど、高木さんと一緒なら。さんぽとかこうえんとかよく分からないけど。でもなんだか、ドキドキする。
また、絵本の世界と同じ景色がひろがっているのかも。そう思うと少しだけ、怖くなくなった。
「高木さんもこ、うえん、よく行、くの」
「この年になってもう行かなくなったけど、小さい頃はよく言ってたよ。ブランコとか、滑り台とか藍も好きそう。」
またよく分からない言葉が出てきて困惑するけど、高木さんの話を聞いているとなんだか楽しそうにも思える。
「いって、みたいか、も。…あ、迷惑、だったらだいじょ、ぶ。」
「迷惑なわけないだろ。よし、行ってみるか」