あなたのヒロインではないけれど






あまりの急展開に、驚くしかない。


先月のバレンタインで企画の具体的な話し合いが始まって1ヶ月。


わずか1ヶ月で、本社との共同開発とアニメ化の話が決まるなんて……。


企画の立案者(という大げさなものではないけど)としては、現実感がまったくなくてふわふわとした気持ちだった。


それと同時に、どうしようと怖さが湧いてくる。


企画が始まってどんどんいろんなことが決まって……次々と商品が発売されたとして。もしもまったく売れなかったら? 魅力がなくて見向きもされないとしたら……。


アニメ化ともなれば、きっと億単位のお金が動く。それで大きな赤字を出させてしまったら。

ちょっとした思いつきがあまりに大事になってきてしまって、恐怖感にも似た怖さで身体が竦み、ガタガタと膝が震えた。


「ユーミ、どうかした?」

「どさくさ紛れに触ろうとするな! 鵜野さん、まずは座って……深呼吸してみて」


氷上さんが背中を押してくれたから、導かれるままに折りたたみ椅子に座る。そして、彼のアドバイス通りに深呼吸をしてようやく落ち着いた。


以前と同じコンクリートがむき出しの小さな会議室は、3月でも少しひんやりしてる。氷上さんがココアをいれてくれて、それをいただいてようやくホッと息を吐いた。


「……すみません、本当に」

「いいですよ。急に大きな話になれば、驚くのも当然でしょう」


氷上さんがいつもの穏やかな笑みで私をそう励ましてくれたのに、なぜか距離を感じ少し寂しくなった。