あなたのヒロインではないけれど




平日はお昼過ぎからがピークタイムになる。学生さんやOLさんが帰りに立ち寄るから、午後3時過ぎからがかきいれ時。


バレンタインが近いからか、男性用の雑貨やチョコを扱う特設コーナーは大にぎわい。まだラッピングは少ないけど、そのうち増えるんだろうな。


「ね~結実は今年もいないの、本命」

「そういう真湖だって、先輩とのケンカはどうなったの?」

「うぐっ」


私は軽く掃除をしながら、真湖は在庫確認をしながら言葉を交わす。


真湖は高校時代から付き合ってるカレがいる。同じバスケ部だった一才上の先輩で、彼は商社に就職してる。 順調に付き合ってはいても、浮気しただの何だののトラブルは絶え間なくあるらしい。この前は大喧嘩をして別れるだの何だのと大泣きしてた。


付き合った経験がない私にはわからないけど、それなりに大変なんだなって思う。


「あれは……いいの! あたしの勘違いだったんだから」


それより、と真湖は私をペンでビシッと指してきた。


「あんたのことでしょ、結実。23にもなって、未だにカレの一人もいないって。あんた、いい子なんだから、コクりゃ上手くいくってばよ。マジで好きなひといないの?」