「どうかしましたか?」
「えっ……あ」
氷上さんの怪訝そうな眼差しで、ずっと彼を見ていたのがバレた! と顔が熱くなる。
「す、すみません……あ、あの……その。そ、そのストラップ……」
あわあわと誤魔化そうとしてから、言うに事欠いてと瞬時に後悔。
(バカ! ストラップのことは以前にも訊いたじゃない。あんまり関心を持つと不自然なのに)
詳しく訊きたい気持ちはあるけれど、あくまでもさりげなくの範囲で。今の私の態度は、単なる興味の範疇を越えてる。
(せっかく、メイクを頑張ってバレないようにしてるのに。自分から墓穴を掘ってどうするの)
どうしようどうしようと狼狽えるあまりに、頭が真っ白になってる。ダメ……何も思いつかない。膝が震えてきた。
そんな私に、氷上さんは何も言わず手を伸ばしてきて。ビクッと体を竦めるのに構わず、指先で頬に触れてきた。
「……こんなに冷えてしまいましたね。お待たせしてすみませんでした。早く中に入って暖まりましょう」
手のひら全体にぬくもりを感じてまもなく、体を引っ張る感覚と同時に足が動き出す。自分が氷上さんに手を引かれて歩いてる――そう認識するのに、たっぷり数分は必要で。
守衛室で手続きを済ませ、入館証を身に付けて部屋の前に到着してからようやく現実を認識し、頬が湯だったように熱くなった。



