「……痛っ!」
小さな痛みを指先に感じて、慌てて体を起こした。
目の前にあるのは散らばったフェルトの生地と、開きっぱなしのソーイングボックス。
(いけない、いけない。危うく針を指に突き刺すところだった)
時計を取ると、とっくに日付が変ってた。それでも休む訳にはいかなくて、小さなマスコットを手に取り作業を再開する。
(ここは特に気をつけないと……)
細かな縫製作業を深夜にやるのは辛いけど、あまり時間がない以上は仕方なかった。
(ここの先を……かがって……よいしょ)
イメージ通りに仕上げるのは難しい。小さなものなら尚更誤魔化しが利かない。だから、自分が今持つ技術をフルに使い、精一杯仕上げてみた。
翌日、夕方。
前日の夜に用意したチョコレートを配り終えて、真湖には約束通りにトリュフをプレゼント。ご機嫌な親友は夜にカレとデートらしい。
「珍しく泊まってくれていいって~お泊まりセットの準備もバッチリだよ」
いつもより大きなバッグを持ってきてたから、何かと思えば。驚いたことに下着やらパジャマやらその他諸々入ってるからとのこと。
「え……お泊まりって、そんなにいろいろ要るの?」
「なぁに言ってんのさ、結実くん! キミだってまもなく必要になるんだから、ちゃんと用意をするんだぜぃ?」
上機嫌な真湖にチョン、と指先で鼻をつつかれたけど。
とりあえず……旅行の予定はないから必要ないと思うよ、うん。



