あなたのヒロインではないけれど




まるで、すべてが止まったように感じた。


ネイサンさんは珍しく感情を押し殺した顔で、私を見下ろしている。


「……ユーミ……知らないの?キミは……知ってるハズデショ」

「……え」


ネイサンさんは私の答えを期待しないまま、ただただ言葉を繋げる。


知ってるって……何を? ネイサンさんは、なんのことを言ってるの?


「タカアキが……アメリカに行ってたことを」

「……!」


肩が、ほんのわずかに揺れた。それはたぶん、認めたに等しい。


私が、彼を“知っていた”という事実を――。


なぜ、ネイサンさんがそんな問いかけをしてくるのか。どうして彼から訊かれねばならなかったのか。突然降ってわいた不自然な話に、疑問に思う余地なんてその時の私にはなかった。


「……あ……の、私……私は」


隠していたことが申しわけなくて、後ろめたくて。とにかく怖くなった私はガクガクと震えながら両手を握りしめる。


このまま……氷上さんにすべてが明かされてしまうの?そんな恐れが膝をすくませ、息苦しいほどの沈黙を作らせた。