「結城先輩、鵜野さんが嫌がっていますから。今はやめてください」
氷上さんが私を庇ってくれたからか、結城さんは「しゃ~ないな」とため息をつきながらも渋々諦めた。
「だけど、絵が描けるならいい。商品のイメージを具体的な形にする時に大きな手助けになるからな。他人の手によるものと比べて、かなりのアドバンテージになる。氷上、いい人材を見つけたな」
「はい。ですが、ぼくが鵜野さんを見込んだのは彼女のセンスや技術に関してです。イラストについては、本当にたまたまですから」
氷上さんは私に気を遣ってくれてる……だけど。やっぱり、彼は仕事の成功のために私を引き入れたんだ。改めてその現実を突き付けられて、胸に冷たい風が吹いたような寂しさを感じた。
(何をバカなこと……氷上さんは最初から仕事のことしか話してないんだから……何を期待してたんだろう。バカな私……)
わかってたけど……。彼が新しい企画のため、と私に声を掛けてきたのは。そうでなきゃ、地味でその他大勢の私に声をかけてくるはずなんてないもの。
……寂しい、だなんて。思わない。昔のことに気づいて欲しいとまで思っちゃいけない……望まない。
私は、単に仕事を上手く回すための歯車。昔、好きだった人の役に立てるなら、喜んでそうなればいいだけ。
歯車は、ただ回ればいい。何も望まず、何も期待をせずに。回って……役割を終われば……忘れられても。それでいいと思わなきゃ……。



