(ひ、氷上さんの腕に……わ、私……なんて図々しい)
とっさのこととはいえ、氷上さんにすがり付いてしまって。なんて厚かましいんだろう……と落ち込んだ。
仲田さんに合わせてしっかり歩いていれば……と反省しきりだけど。それと同時に、胸のドキドキも速まってしまって。何を喜んでいるの! と自分自身を叱りつけた。
「ご……ごめんなさい、あの……すごくご迷惑をお掛けして……」
「これくらい、迷惑だなんて。鵜野さんにケガがなかったなら、むしろ嬉しいくらいですよ」
にっこりといつもの笑顔を見せてくれる氷上さんの優しさに、そのまま見入ってしまう私も大概バカだなあ……と思う。
でも……
何だか、氷上さんのそんな優しさは……底が見えない。そんな気がした。
彼が昔から優しいのは変わらない。だけど……それが本心からの自然なものでないような。上手く言えないけど……優しさの質が以前とは違う。そう受けとめたのは、私が昔よりひねくれているから?
……そう思うと、なんだか……しんみりした気分でいると。急に左手を引かれて、慌てて顔を上げれば。満面の笑みのネイサンさんが前を指さした。
「ユーミ、ユーミ! 見て。ニホンジカだヨ!」
「あ……」
運動が出来るようにか段差がある急斜面がニホンジカの飼育スペースで、かなり広い面積がフェンスに囲まれてる。今はちょうど餌やりの時間らしく、飼育員さんの手から撒かれた餌をニホンジカたちが我先にと口に食んでた。



