自分に一生懸命に言い聞かせる。
初めから結果がわかりきった恋は、しても苦しいだけだと。
でも、それでも。
肩を背中を包むストールのわずかな重みと暖かさは。
風に乗り感じる微かなコロンの香りは。
ゆっくりと私に歩調を合わせて歩いてくれる優しさは。
確かに氷上さんという証で……嬉しく思わないはずがない。
たとえ彼が“ゆみ先輩”と結婚する予定だとしても……。この、ほんのつかの間の時間だけは私と二人きり。
(ごめんなさい……ゆみ先輩、今だけは……こうして二人でいても許してください)
彼の一生はあなたのものだから……ほんのささやかな幸せを……許してくださいね。でも……安心してください。彼はいつだって、あなたしか見えていなかった。
……今だって。
私と二人でいるのに、とても優しく笑ってくれるのに。彼の瞳は、私を見ていない。物理的に見てはいても、彼の意識はこの場にいないあなたしか見ていないことがとてもよく解ります。
とても、切なそうに。在りし日を懐かしむような、悔やむような……氷上さんは、そんな目をしていた。
「OH! CuteなGirlのユーミ~会いたかったヨ! イタイ!!」
べしっ! と鈍い音が響いたのは、氷上さんが私に向かって突進してきたネイサンさんの顔面を、手のひらで受け止めたからだった。



