あなたのヒロインではないけれど




東公園は入り口の駐車場から程近いところに、小さな池がある。公園の敷地にはたくさんの池があって、紅葉の頃は見事な極彩色が水面に映えて綺麗なんだけど。今は、さすがに枯れ木が目立つ。


水面にはアヒルやカイツブリ、カモや白鳥が浮いていて。たまにカワウや、運が良ければカワセミも観られる。


久しぶりに見る懐かしい光景に見入っていると、水面を吹き渡る風が肌を刺して。思わずぶるりと体を震わせた。


(ちょっと薄着……し過ぎたかな)


自分の迂闊さにため息を着きそうになっていると、バサリと肩に重みを感じて。ハッと気づくと、薄いグレーのストールが体に掛けられてた。


(これ……氷上さんが? )


後ろを振り向くと、氷上さんは私に掛けたストールの形を両手で整えた。


「体を冷やしてはいけませんから、よかったらお使いくださいね」

「あ……ありがとう……ございます。その……とても暖かいです」

「よかった。それ、ぼくも気に入ってヘビロテしてるんですよ。匂いとか気になったらすみません」

「い、いえ……」


氷上さんが、普段から使ってるストール……彼の……そう思うと。何だかキュンと胸が鳴って、たまらなくてストールの端を掴んだ。


胸が……きゅうっと絞られるみたい。苦しい……けど、嫌な苦しみじゃない。


(ダメだよ……好きに、ならない。氷上さんはきっと誰にでもこうして優しいんだから)


一生懸命、自分に言い聞かせる。微笑みも、優しさも。特別じゃない。誰にも向けられるんだ……って。