「鵜野さん!」
東公園の入り口に近い駐車場で、氷上さんが走り寄ってきてくれた。急いで兄の車を探すと、幸いもう出ていった後みたいで。ほっと胸を撫で下ろした。
「すみません、急にお誘いして。ご迷惑ではありませんでしたか?」
「い、いえ……だ、大丈夫……です」
ずいぶん急いだのか息を弾ませた氷上さんに、申し訳ないやら驚くやらでどぎまぎした。
いつもはサラリーマンとしての制服とも言えるスーツ姿ばかりだったけど、今の彼はおそらく私服。濃いグレーのスリムなチノパンと黒のピーコート、濃いめの青色のタートルネックセーター……踵の高めな革の紐靴と、カジュアルだけどどこか大人っぽくて。ドキドキと鼓動が速まる。
恥ずかしさから俯いたとき、手にあった荷物がいつの間にか彼の手に奪われたことにようやく気付いた。
「荷物運びくらいさせてくださいね」
にっこりと笑った氷上さんの笑顔にほだされそうになったけど、私は慌てて彼の手から小さなバッグだけを奪い取った。
「え……えっ……と、あ……ありがとうございます……あの……こ、このカバンは私が」
「そうですか。すみません、ならこれを」
急には用意をできなかったから、姉から借りた小さめのブランドバッグ。汚さないように気をつけなきゃ……と、手にしながら周りを見渡した。
同僚も一緒だと聞いていたから、てっきりその辺にいると思ってたのに。氷上さんはあ、と小さな声を上げた。
「すみません、同僚達は先に動物園に近い広場に居ます。一緒に行きましょう」
「あ、はい……」
そうなんだ、と思いながら氷上さんが先に歩き出したから、慌てて彼の後についていった。



