(……バレたくないのに……ばれちゃいけないのに。会いたいなんて……バカだな、私)
氷上さんが皐月先輩……“たかあきくん”というのはほぼ間違いない。なら、過去を蒸し返さないために、なるべく近づかないのが一番なのに。
どうして……“仕事のついで”に誘われただけなのに、こんなに弾む気持ちになるんだろう。そっと胸に手を当てると、とくとくと小さく鳴ってる。いつもより忙しない鼓動が、自分の偽りない気持ちを表してた。
「……いいよね、別に氷上さんが私に好意を持ってるから誘ったわけじゃないし。単なる仕事のパートナーとして……必要があるから、誘ってくれただけ。勘違いしないし、しちゃダメだよ。氷上さんには……好きな人がいるんだから」
大丈夫、大丈夫。
私は、まだ氷上さんを好きじゃない。私は自分の気持ちをコントロール出来る。氷上さんを好きにならない……なっちゃいけない。絶対に。
「うん、大丈夫! よし、行こう」
氷上さんはお迎えをしてくれると申し出てくれたけど、また断って兄に送ってもらいます。すると、なぜか兄は眉を寄せて「なんでそんなに洒落てんだ?」と怪訝そうに言い出したから。ヒヤヒヤしながら「真湖と待ち合わせ」と言えば。渋々ながら引き下がってくれたけど。
後で絶対に追求されるな……的な視線をビシバシ感じながら、冷や汗をかきつつ車から降りる羽目に。
おみやげ……ご機嫌を取るために必要かな。



