あなたのヒロインではないけれど








「よ……よし、うん。大丈夫!」


鏡の前の自分を見て、うんと頷く。

昨夜は半ば徹夜で着ていく服に悩んで、腫れぼったい目を誤魔化すために冷蔵庫に走って。


慌ててシャワーを浴びた後は、メイクをするためにドレッサーに座って3時間。悪戦苦闘の末に出来上がったメイクは、いつもよりずっとマシ。


2月の上旬――ちょうど立春の日だから、ちょっぴりと春を意識して薄いピンク色のワンピースを着て、ストッキングも薄手だけどしっかり保温されるもの。踵のあるヒールと薄茶色のチェスターコート。


髪の毛は染めるまでは勇気が出ないから、せめてヘアアイロンで緩く巻いておきました。


これで、氷上さんも私があの女の子だと気付かないはず。


“たかあきくん”が小学3年生で池から泥まみれのぬいぐるみを拾ってくれて、中学3年で地面から土まみれのマスコットを拾ってくれた。


桜の花びらの舞う中での再会だったけど……あの時。氷上さん……皐月先輩は、私だと。6年前に会ったことがある女の子だと、少しも気づかなかったし。そんなそぶりもなくて。


憶えていたのは自分だけ……と悲しくなったっけ。


そして……皐月先輩のそばには、誰もが見入ってしまうような。とても美人に成長した“ゆみ先輩”が、常に居たんだ。


いつも、どんな時でも。


生徒会長をしていたゆみ先輩を支えるのは、いつだって皐月先輩だった。誰もが認める公認のカップルで。ずっと一緒だと信じて疑わなかった……。


ゆみ先輩が、中学卒業と同時にアメリカ留学を決意するまでは。