あなたのヒロインではないけれど




「鵜野さん、動物はお好きですか?」

「え……あ、はい」


それだけは自信があったから、コクンと頷いた。すると、氷上さんの表情が少しだけ和らぐ。


「そうですか……実は、今度の火曜日に動物園に行く予定なんです。仕事の一環で、同僚たちも行きますが……よかったら、鵜野さんもいかがですか? なにか、新しいアイデアが出るかもしれませんよ」

「え……」


氷上さんからお誘いを受けた、と分かるまでたっぷり30秒は掛かったと思う。そして、内容を消化して話を理解するまで。更に30秒は掛かった。


(動物園……氷上さんと……動物園に行けるの?)


火曜日はたまたまお休みをもらってる。動物園なんて……中学生の時に家族と行って以来だ。市内の東公園には無料で観覧できる動物園も併設されてる。たぶん、氷上さんはそのことを言ってる。


たしか、あの公園には等身大のティラノサウルスや草食恐竜たちのレプリカが設置されたとニュースで聞いた。


女性では珍しいかもしれないけど、私は恐竜にも興味がある。見てみたい、と思いながらもなかなか行く機会はなくて……いつしか忘れていたのだけど。


同僚が行く、ということで人見知りがひどくなる可能性もあるし、あまり氷上さんと接するとボロが出るかもしれない。


でも、それでも。私にはひどく魅力的な提案に思えて。断る方が難しいくらいだった。


「はい……よろしくお願いします」


気がつけば、口から勝手に承諾の返事が出ていて。氷上さんのホッとした顔を見たら、これでいいかななんて思ってた。