あなたのヒロインではないけれど




(しばらく材料を買うのを控えなきゃな)


大好きな手芸をするのを自粛するのは辛いけど、美容品にどれだけお金が掛かるか予測がつかない以上は仕方ない。真湖は今度服や靴を買おうと張り切ってたし。ヘアアイロンも購入しようとのたまうた。


(女性らしくって……本当に大変。みんな尊敬しちゃうよ)


町行く綺麗な女性を羨ましく思ってたけど、毎朝毎朝時間をかけて綺麗にしてるんだ。その努力を知らずに羨んでも仕方ない。少しでも近づかなきゃ。


(可愛くなって……氷上さんに……見てもらえたらなあ)


それまではなるべく来ないで欲しい、と商品棚を掃除しながら考えていたけど。その願いは虚しく、午後には氷上さんの姿が店内にあった。


「こんにちは、まだ寒いですね」

「こ……こんにちは。は、はい……」


入店してすぐ彼が一番に私に話しかけてくれたことが、何だかくすぐったくて嬉しい。店長もすぐそこにいたのに、申し訳ない気持ちはあるし気恥ずかしいけど。心がぽかぽかとしてきた。