疑問には上手く答えることができなくて、俯いたままの私に兄は仕方ないなあ、と頭に手を置いた。
「相変わらずのはにかみ屋さんだな。兄妹なんだから、もっと言いたいことを言えばいい。怒ったりしないから」
「……うん」
「よし! それでいい。困ったことがあるなら、いつでも兄ちゃんに言えよ。おまえのためならなんでもしてやるから」
クシャクシャと髪の毛を乱されて、 抗議の意味も込めて頬を膨らませた。
「お兄ちゃん! せっかくお姉ちゃんが綺麗にしてくれたのに」
「はは、それくらい元気なら大丈夫そうだな。じゃ、帰りはタクシーを使うんだぞ?」
兄はそう言って私の手に万札を握らせようとするから、慌てて助手席から降りた。
「大丈夫だよ! バスだってあるし、いざとなったら歩くから」
「いや、結実は女の子なんだから気をつけないとな。なら、終わったら電話をくれれば迎えに行くぞ?」
「そこまでしなくていいよ。私だってもう23の大人なんだから、ちゃんと一人で帰れるし」
まだ何かを言いたげな兄の言葉を遮るべく、ドアを閉めて無意味なやり取りを断ち切った。
(ホントにもう……お兄ちゃんはいつまでも私を子ども扱いするんだから)
そりゃ、3人兄妹の末っ子で可愛がられるのも仕方ないけど。それにしたって、兄は心配性過ぎる。
もしかするとこのちっこい子どもみたいな姿が原因なのかも……なんて考えたら、どんどん気分が下がっていった。



